参院選を目前に、自民党が細田博之衆院議長のセクハラ疑惑に懸念を強めている。
「事実無根」と主張する細田氏は26日、この問題を再び報道した週刊文春に対し「訴訟も視野に入れて検討したい」と抗議するコメントを公表した。
慣例で自民会派を離脱し、無所属になっているとはいえ、自民幹事長、官房長官を歴任し、最近まで自民最大派閥のオーナーでもあった大物だ。
岸田文雄政権の攻め手を欠いてきた野党は、ここぞとばかり追及の照準を定め始めた。
「文春砲」の異名で知られる週刊文春は今月19日、細田氏から深夜に「今から来ないか」と電話を受け、自宅に足を運んだことがあるという女性記者の証言を報じた。
さらに、26日には「細田議長の嘘(うそ)を暴く」と題し、初報を大きく上回る4ページの特集記事を掲載。
細田氏が昨年1月に女性記者と懇談した際、「いつでもいいから、うちに来てね」「横で添い寝するだけだから」と発言したとする、新たな複数の証言を提起した。
細田氏はこれを受け、「既に事実無根として抗議したが、また同趣旨の記事が掲載されていることに強く抗議する」と火消しに回ったものの、疑惑は収束どころか野火のように広がっていく様相。
衆院議長は、参院議長とともに国権の最高機関である立法府を象徴する存在であり、一段の高潔さと深い資質が求められるからだ。
この日、衆院予算委員会で立憲民主党の城井崇氏が「第三者による事実確認の調査を指示すべきではないか」と提案したのに対し、
首相は「行政府の長としてコメントは控える」「議会で適切に対応するべきものだ」と建前論をかざして、明らかに守勢に回った。
デリケートな案件で自身に火の粉が降りかかることを恐れたのか、自席まで秘書官を呼び、答弁内容を確認する一幕もあった。
対女性記者のセクハラを巡っては、2018年に当時の財務事務次官が辞任したケースが記憶に新しい。
性被害を告発する「#MeToo」運動の世界的な定着もあり、セクハラがもたらす代償は格段に重くなっている。
終盤国会や参院選への影響を心配する自民幹部は、週刊文春の報道に「(録音などの)物的証拠はあるんだろうか…」。
逆に、立民の馬淵澄夫国対委員長は、衆院議院運営委員会で説明責任を果たすよう細田氏に求めるとともに、議長不信任決議案の提出もちらつかせてみせた。
細田氏は昨年11月の議長就任以降、行司役でありながら「1票の格差」是正に向けた衆院小選挙区定数の「10増10減」に否定的な発言を重ね、
与野党から「立場をわきまえてほしい」と苦言が相次いでいた。そこに加えてのセクハラ疑惑。
参院選の女性候補擁立に注力してきた自民の選対関係者は「せっかく党の支持率が高いのに、最大のウイークポイント(弱点)になりつつある」と頭を抱える。
(河合仁志)
https://news.yahoo.co.jp/articles/c6a4d971a5369bc9976e8a82d32288c54872bb3d