
「リベラルという媚薬」を見抜く若者たち
●フランス大統領選
フランスの大統領選挙はどうやら無難な結果に落ち着きそうだ(右派ポピュリスト・ルペンが躍進し決選投票へ 欧州の運命を左右するフランス大統領選挙)。
父親のルペン氏が盛んに報道された時代も僕はよく覚えている。娘のルペン氏は父ルペンより穏健だと言われるものの、
フランス国内のアンチEU気分を表象する存在だろう。
反EUのイギリス、アメリカファーストのトランプという流れはここに来てブレーキがかかりそうなものの、ここ一年の欧米の動きは、
人々の「理想と現実」についていろいろ考えさせられる。
EUやオバマが標榜してきた様々な「平等」への動きが、その中で不利となった層(貧困白人層ほか)の不満へと集約されていき、
それを修正する政党や政治家が支持される。
おもしろいことに、不満は極端な保守主義者へと集められる。その代表がトランプだろう。
日本では、不満は若者層の保守化という現象を生み出している。
また、既存保守権力への異常なほどの支持の高さ(多少のスキャンダルでもまったく揺るがない)という現象にもなっている。
●聡明な人々は「沈黙」する
こうした超保守や新自由主義の人気の高さは、日本では特に、「リベラルのうさんくささ」と結びついているように僕には思える。
本来ならば、保守政権が少し行き詰まった時は、その反対のリベラルへと支持は流れる。
が、日本においては、理想的リベラリズム(戦争放棄と立憲君主制反対)が潜在的に支持されており、この2項目の存在感はいまだ大きい。
また、メディアの思想も、理想的リベラリズムがまだ支配しているため、こうした理想主義に頷けない人々の声は潜在化していく。
リベラルや理想主義をわが国ではなかなか正面から論じにくい。それは、再軍備化や同盟関係の再考という点と裏腹であり、
平和を脅かす勢力とラベリングされるからだ。
また、厳密にリベラルを語ると、ややこしいアカデミズムの沼や、紋切り的人権思想の反論に引き込まれることもある。
だから、そうしたややこしさを避ける聡明な人々は「沈黙」する。また、ネットメディアのような比較的自由な媒体も、ややこしさを避けるために、
現実的議論(憲法9条再考や現実的再軍備化)は避ける。
自由で聡明な人やメディアほど、いま最も必要な議論(現実的再軍備化や9条再考)を避ける。それをどこかで意識しつつも、自分の専門領域にひきこもる。
そこにひきこもらないのは、2ちゃんねらーや2ちゃんねらーの主力である非正規雇用の団塊ジュニア、そしてひきこもりやニートの「若者」くらいだ。
http://blogos.com/article/219804/