
水中光無線で大容量通信=防衛省支援受け海洋機構開発−「画期的」技術の行方は
海洋研究開発機構は、水中で光無線を使った大容量のデータ伝送を可能にする技術を開発した。
100メートル以上離れていても動画を送受信できるといい、将来はロボットを使った海底探査や海中での観測作業などに応用できる可能性がある。
研究者は「画期的な技術」と評価する。
開発に当たり海洋機構は、防衛省が将来の装備品開発を目指して資金提供する「安全保障技術研究推進制度」の支援を受けた。
科学者の代表機関である日本学術会議は同制度を問題視しており、将来の軍事応用など、新技術の行方にも関心が集まりそうだ。
同機構の沢隆雄・主任技術研究員によると、水中での無線通信には主に音響技術が使われてきたが、通信速度が遅く、動画など大量のデータ送受信はできなかった。
ケーブルを使えば可能だが、海流などがある場所では円滑な作業が難しかった。
沢研究員らのグループは水中で光無線を送受信できる装置を開発。7月に駿河湾口付近の水深700〜800メートルで試験した結果、距離120メートルで
速度20メガbpsのデータ送信に成功した。
音響通信と比べると約1000倍の速さに相当する。
沢研究員は「画期的な成果で、水中で離れたコンピューター間の遠隔操作が可能になるなど、用途は幅広い」と説明する。
この研究には、防衛省が2015年度からの3年間で計約6500万円を提供した。沢研究員は「制度があれば、(研究資金獲得のため)応募するのは当たり前だ」と話す。
一方、同省の担当者は「基礎研究の段階なので、どのような開発につながるか分からない」としつつ、潜水艦などの技術に応用できる可能性があるとの考えも示した。
日本学術会議は3月、防衛省の制度は「職員が進捗(しんちょく)管理を行うなど、政府による研究への介入が著しく、問題が多い」と批判する声明を公表。
「研究成果は科学者の意図を離れて軍事目的に転用され、攻撃的な目的のためにも使用され得る」と指摘していた。
声明作成に関わった法政大の杉田敦教授は「防衛目的(の資金)だと研究者の受ける圧力は大きい。過去に軍事研究に科学者が動員されたことへの反省もある」
と説明している。(2017/10/29-14:36)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2017102900293&g=soc